アーティストステートメント

現代社会と自己との関係性を考察する上で、遠景としての自然、近景として野に咲く花、その周辺に生きる小さな命を大切にしたい。

 

山間部で生まれ育ち、一時都会で制作し、再び故郷に制作の拠点を移した自分にとって、一括りにされがちな現代社会も多様な社会があるという実感がある。

 

私の制作の拠点は、高天原という神話の里の隣接地域で、今でも神事が民間の伝統行事として行われており、地域では山や木々、岩や小さな命に霊性を見る。

 

私もその影響を受け、一輪の花の美しさの中に生命の尊さを表現したいという気持ちがあり、色彩や形を再現する表現を経て、祈りに似た模様を刻むという表現に変化していった。

 

情報で形作られる現代社会は、効率化・最適化が重視され自由ですら、どこか人工的である。

 

その息苦しさからの解放は私の制作の根幹を成す。

 

歴史的な美術文脈との接続を拒絶し、特定の伝統文化様式を参照せず、本能の赴くままに無意識から生み出される模様は、生命の持つ霊性への賛歌であり、人工的自由社会への問いでもある。